海洋物の映画と聞いて、まずこの作品を思い浮かべる大航海時代のプレイヤーはきっと少なくないかもしれません。まだ観ていないかたには一押し。帆船の表現がリアルだという評もある“パイレーツ・オブ・カリビアン”が、ディズニーランドのアトラクションを映画化したに過ぎないことがよくわかるはずです。
1805年ドーバー沖を航行する英海軍のフリゲート船H.M.S.サプライズが、カレーを出航したフランス私掠船アケロン号を索敵/交戦ののち、延々とラテンアメリカまで追跡していくというストーリーは、おもに下記3種のシークエンスにより展開されます。
まず帆船描写。提督、航海士、見張りに立つ准士官、船大工、船医らがこの時代、どのような秩序と手順をもってふだんの航海をこなし、嵐を切り抜け、海戦に臨んでいたのかがうまく再現されています。フルリグドセイルの使用により最大戦速を出すシーン、海上で損壊部を修繕していくシーン、甲板上の敵船員の殺傷とメインマストの破損を目的とした至近距離の仰角射撃に始まり、コヴァースによる敵船拘束後の白兵戦へと続く海戦シーンなど、見どころは多いです。
そして乗組員のセリフによる背景描写。船長室で交わされる提督と船医による互いの職分を超えた友情、晩餐の場で俎上にあがる英海軍の英雄ネルソン提督を巡る逸話、二層甲板に流線形の船体構造を備えた敵戦列艦の模型を巡る士官との会話、等々。個々の会話が、18世紀半ばから19世紀初頭にかけての西欧の航海状況を反映しており興味が尽きることはありません。
最後に作品後半の舞台となる、ガラパゴス諸島の自然描写。提督の親友であり、博物学者でもある船医がここでの主役となります。新種の植生、未知の生態へ次々と触れるうちに沸いてきた、自分がこれらの生物群の第一発見者になったのだという興奮、学者としての使命感と、軍属として優先すべき任務とのあいだに生じてゆく葛藤はとても鮮明で痛ましいものがあります。ハリウッドの商業映画がガラパゴスを撮ったこと自体がまず、稀有な達成。
ここでDOLに引き付けた余談を一つ。システム的な区別が恣意的なため論議を呼びがちな軍人/海賊の境界について、劇中に年配の船夫らが若い士官に説く形で印象的な会話がなされる場面があります。簡単に言えば、敵対国の商船が目の前を素通りするのを指をくわえて見ているのは国家に仕える軍人として失格だけれど、被害に遭う商船の側からみれば襲ってくる相手はすべて海賊野郎という話。つまり“軍人”は身分で“海賊”はレッテルなので、同じレヴェルで語ること自体に一定のバイアスがかかっているということ。ここらへんがきっちりと整理されればぐだぐだなことを言うひとも減って、このゲームでの対人プレイはきっとより楽しくなりますよね。
ちなみにこの映画の副題は“The Far Side of the World”。「船長、世界の果てですぜ、針路を変えさせてもらいやす」という事態が作品中でも起こってます。ガラパゴスがどう実装されるのかは、個人的に今夏の追加パックで一番楽しみにしているところ。ガラパゴス上陸地点、カム。
"Master and Commander: The Far Side of the World" by Peter Weir [+scr] / Russell Crowe, Paul Bettany / William Sandell [prd. design] / Patrick O’Brian [book author] / 139min / US / 2003
1805年ドーバー沖を航行する英海軍のフリゲート船H.M.S.サプライズが、カレーを出航したフランス私掠船アケロン号を索敵/交戦ののち、延々とラテンアメリカまで追跡していくというストーリーは、おもに下記3種のシークエンスにより展開されます。
まず帆船描写。提督、航海士、見張りに立つ准士官、船大工、船医らがこの時代、どのような秩序と手順をもってふだんの航海をこなし、嵐を切り抜け、海戦に臨んでいたのかがうまく再現されています。フルリグドセイルの使用により最大戦速を出すシーン、海上で損壊部を修繕していくシーン、甲板上の敵船員の殺傷とメインマストの破損を目的とした至近距離の仰角射撃に始まり、コヴァースによる敵船拘束後の白兵戦へと続く海戦シーンなど、見どころは多いです。
そして乗組員のセリフによる背景描写。船長室で交わされる提督と船医による互いの職分を超えた友情、晩餐の場で俎上にあがる英海軍の英雄ネルソン提督を巡る逸話、二層甲板に流線形の船体構造を備えた敵戦列艦の模型を巡る士官との会話、等々。個々の会話が、18世紀半ばから19世紀初頭にかけての西欧の航海状況を反映しており興味が尽きることはありません。
最後に作品後半の舞台となる、ガラパゴス諸島の自然描写。提督の親友であり、博物学者でもある船医がここでの主役となります。新種の植生、未知の生態へ次々と触れるうちに沸いてきた、自分がこれらの生物群の第一発見者になったのだという興奮、学者としての使命感と、軍属として優先すべき任務とのあいだに生じてゆく葛藤はとても鮮明で痛ましいものがあります。ハリウッドの商業映画がガラパゴスを撮ったこと自体がまず、稀有な達成。
ここでDOLに引き付けた余談を一つ。システム的な区別が恣意的なため論議を呼びがちな軍人/海賊の境界について、劇中に年配の船夫らが若い士官に説く形で印象的な会話がなされる場面があります。簡単に言えば、敵対国の商船が目の前を素通りするのを指をくわえて見ているのは国家に仕える軍人として失格だけれど、被害に遭う商船の側からみれば襲ってくる相手はすべて海賊野郎という話。つまり“軍人”は身分で“海賊”はレッテルなので、同じレヴェルで語ること自体に一定のバイアスがかかっているということ。ここらへんがきっちりと整理されればぐだぐだなことを言うひとも減って、このゲームでの対人プレイはきっとより楽しくなりますよね。
ちなみにこの映画の副題は“The Far Side of the World”。「船長、世界の果てですぜ、針路を変えさせてもらいやす」という事態が作品中でも起こってます。ガラパゴスがどう実装されるのかは、個人的に今夏の追加パックで一番楽しみにしているところ。ガラパゴス上陸地点、カム。
"Master and Commander: The Far Side of the World" by Peter Weir [+scr] / Russell Crowe, Paul Bettany / William Sandell [prd. design] / Patrick O’Brian [book author] / 139min / US / 2003
コメント
かなり楽しめそうな作品!
アランチャさんには、それ古い本!と言われましたが、ジャック・オーブリーシリーズ読み始めます^^
O’Brianの原作って、たしか読み通すのに一年かかるような長生きシリーズだよねw がんが!
以前レンタルで観たことあったのですが
こちらの素晴らしい記事を読んで
また観たくなって借りてきちゃいました。
ディティールをたっぷり詰め込んだ映画なので、二度見てつまらない作品ではないですよね^^
コメント感謝です^^
あれは結構おもろいね
で、海賊・軍属か
そういうスタンスの違いでしかない善悪みたいな価値観て結構色々あるんだが、それがわかるほど練れている人間なら国粋とかに流されたりもしないだろうな
何でこんな簡単な事がわからんのだ?と歯噛みするような事もあったが今はそういうのから離れてるせいか気が楽だよ
ゲームが遊びじゃなくてひなびた自尊心を維持する場になってるようなタイプはさ、まわりもみんなそうだと本気で思ってて、対等な相手として何か言っても感情的な攻撃とか否定としか受け取らないからね、まぁ関わらないのがいいんじゃないかなw ぐぴはそういうのがほんと多いことに最近ようやく気づいて驚いてるけどね^^;