Job Description 2: 地方海賊 【パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち】
  この作品の続編となる『パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト』が国内の映画館できのうから封切られましたね。それにちなんで。

  以前の記事でこの映画について“ディズニーランドのアトラクションを映像化したに過ぎない”と述べましたが、これは酷評の意図のみによるものではなく、実際この作品は Walt Disney Pictures による製作なんですよね。本家ディズニーランド(in US)のアトラクションには、ジョニー・デップ演じる主人公ジャック・スパローを模した人形も登場しているようです。
  こうしたディズニーランド本体の集客戦略とも絡んだ映画製作の方向性は、作品の中身にも当然強い影響を与えているわけですが、そうした観点も踏まえてこの映画の見どころを以下のようにまとめてみます。

■親しみのもてるアクション/見世物小屋性
  ヒーローとしてのジャック・スパロー像は、もう一人の主人公である刀鍛治の青年(byオーランド・ブルーム)の眼差しを通して描かれるのですが、この二人が鍛治屋の工房で初めて顔を合わした際の格闘シーンに顕著なように、作品中に登場するアクションは超絶的な身体妙技を見せつける種の演出を施されることがありません。
  これには児童層を観客対象に含む作品だから、という以上に、感情移入の契機をそのような直接的な身体性へ求めたからという理由が大きいように思います。映画後半の完全CGにより展開する幽霊海賊たちとの格闘シーンですら、不死であることがむしろコミカルに描かれているのもおそらくこのためでしょう。ここでは“ワイヤーアクション”や“スローモーション弾除け”はむしろ余計なんですね。『パイレーツ・オブ・カリビアン』は“ビッグ・サンダー・マウンテン”のようなジェット・コースター系ではなく、あくまで“アマゾン・クルーズ”や“ホーテッド・マンション”のような見世物系作品として製作される必要があったわけです。
  こうした傾向は海賊島トルトゥーガのシークエンスなどにもよく表れており、アトラクションのカートに座った乗客の視線同様、カメラは海賊島の歓楽街の様子をなめ回すように進んで行きますね。DOLで実装される海賊島も、ビジュアル的にはこのシーンがある程度モデルになる可能性は高いかなと思っています。海賊島のヴィジュアルイメージの源泉って、それほど多くはありませんからね。

■ジェリー・ブラッカイマーによる製作
  ハリウッドメジャーによる大作映画群を、インディーズ系やヨーロピアンシネマの作品群と質的に同列なものとして語るひとが時折いるけれど、わたし個人はこうした視点で現在のハリウッド映画を語ることはあまり意味がないだろうと思っています。つまり、この手の娯楽大作映画の市場が“統計的に”あぶり出す最大多数の観客にとって映画とはすでに、ウーファーをも使用した多層的な音響効果や心地良いリラクゼーションシートといったサービスの行き届いた環境下で楽しむイリュージョン装置に他ならず、映画作品本体の質は‘趣味’の選択を左右する最終的なソフトの微細な差異としてしか機能しない。その意味では文字通り、現在のハリウッド映画は従来の通念における“映画”よりむしろ“アトラクション”に近いんですね。
  そうした流れの権化のようなプロデューサーがジェリー・ブラッカイマーなわけで、彼の製作した映画を楽しむコツは、ストーリーの意味やら辻褄合わせなどにとらわれず、そのお金のかかった視覚的イリュージョンにひたすら身を委ね切ることとまずは言ってよいでしょう。主人公が二人でフリゲートクラスの艦船を乗っ取るシーンや幽霊たちが海底からヒロインのいる船に襲撃をかけるシーンなど、DOLプレイヤーにとっても見ごたえのあるシーンは多いですよね。カメラ撮りも上手いです。

  この映画はすでに観たひとも多いでしょうから、角度を少し変えて書いてみました。90年代から加速しているハリウッドメジャー統廃合の流れのなか、アニメ専業からの脱却を図る Walt Disney Pictures にとってこの作品が興行的に成功をおさめたことの意味合いは非常に大きいものだったと想像できます。すでに三作目が製作中のようですが、とりあえず第一作、まだ観ていないかたにはオススメできます。わたしは来週中にも二作目を観に映画館へ出かける予定です。夏休みな子供たちにまぎれて。(笑)

"Pirates of the Caribbean: The Curse of the Black Pearl" by Gore Verbinski / Jerry Bruckheimer [prd.] / Johnny Depp, Orlando Bloom, Keira Knightley / 143min / US / 2003

コメント

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王子
2006年7月25日2:38

ネズミーランドのPCは非常につまらんアトラクソンなんだよな
なんか船でだらだら引き回されて海賊らしき人形の群れを越えてちょっと落ちるだけの微妙なものだよ
しかも短い・・・

ジェリー・ブラッカイマーってパールハーバー撮ったヤツだっけか?
アレもネズミー映画だったっけなぁ
キングアーサーも彼だっけ・・・
なんか微妙な監督だな

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イブン・バットゥータ
2006年7月25日11:36

 私の映画評価は・・・

監督、キャスト、ストーリーを覚えている映画→松
若干あらすじを覚えている映画       →梅
まーったくなんも記憶に無い映画      →竹

パイレーツオブカリビアンは、「竹」ですなぁ。
今度もねェ・・・。

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イブン・バットゥータ
2006年7月25日11:46

訂正 梅→竹
   竹→梅

goodbye
goodbye
2006年7月25日17:09

監督はゴア・ヴァービンスキーってひと。第二作も同じなんだけど、まだ知名度は低いね。ブラッカイマーはプロデューサー。日本じゃ映画のプロデューサーってあんま注目されないあたりはやっぱ、この国の受け身的な価値基準がよく出てるのかもね。鈴木敏夫なんかも海外で評価されてからだよね、それまでは宮崎駿の付き人みたいにしかメディアには出こなかったし。ブラッカイマーは、監督を誰にするかというレヴェルから主導権を発揮するタイプ。その意味では本の編集者とか展覧会のキュレーター、イベントの仕掛け人なんかもあまりスポットライトを浴びない国だよね。

少し変わった子供だったのは確かなんだけど、わたしは幼い頃からディズニーランドのアトラクションで一番好きだったのは、こういう見世物系のやつね。他には子供の城(これも船に乗って回るやつ)とか、未来SF系のもなんかあったよね。混んでる日でもすぐに乗れるやつだな、どれもw

映画がおはなしやドラマである必要をとくに感じてないこともあって、メインのキャスト陣とかストーリーってメジャー系の場合わたし的にはけっこう二の次で、カメラ回しとか美術のほうが見どころだったり。“マスター・アンド・コマンダー”の美術担当 William Sandell はDOL的に注目すべきひとかも。

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