叔父のブログが再開したようなのでその紹介から。ここのところ当ブログは半冬眠の状態に入ってますが、代わりにという感じで。
Mamma Mia! 教授ブログ!! :
http://rainyheart.blog32.fc2.com/
スタイルは違うけれど思考回路はほぼ一緒なので、‘さよなら航路’に頻訪いただいているかたの幾らかにはこちらも気に入ってもらえると思います。あと私事の報告になりますが、普通免許とれました>w< 技能検定、あのシチュエーションはバカみたいに緊張しますね。(笑)
では本題。‘大航海時代Online’拡張版の新章が来週からスタートしますね。地理面での追加実装はオセアニア一帯がメインとなるようです。それにちなんで今回はニュージーランドの映画をとりあげます。
▼リバー・クイーン
この映画は1860年に起きたマオリ戦争の史実が舞台になっています。イギリス帝国主義の尖兵として密林に送り込まれた開拓団の隊士たちと、彼らを待ち受けるマオリ族の戦士たちのあいだで翻弄される娘が主人公。彼女も史実上の人物で、原題の‘River Queen’はマオリの側から彼女に当てられた呼称です。
19世紀半ばといえばイギリス本国ではすでに産業革命の真っ只中ですから大局的には大航海時代とは言い難いわけですが、そこは地球の裏側の出来事です。ジェームス・クックが初めてこの周辺の海図を作成したのが18世紀後半ですから、この地域では時代を遅らせて考えたほうが妥当というケースは様々な面で見られるのですね。登場する船について言えば、河をさかのぼる小舟やタグボートには素朴な蒸気機関も使用されて始めているものの、外洋向けの大型船舶はいまだ帆走が主体という時代。マオリの人々が乗る船としてはもちろん手漕ぎの木製カヌーが多数登場します。
本編は主人公の娘がマオリ族の青年の子供を身篭るところから始まります。彼女は開拓団に属する軍医の娘であり幼い頃から父より医術の教育を受けていたのですが、このマオリの子を宿したことと医術の素養を得たことの2点がその後の彼女の軌跡を稀有のものにしてゆきます。演じるのはサマンサ・モートン。明日から国内公開される“エリザベス:ゴールデン・エイジ”でもスコットランドのメアリー女王という極めて重要な役を演じています。エリザベス最大のライヴァルといって良い存在ですね。
そして彼女を想うイギリス側の兵士として登場するのがかのキーファー・サザーランド。ドラマ“24”のジャック張りのアクションシーンも確かにあるのですが、日本では軍服姿の彼がライフルを構える姿がDVDジャケットに大きく描かれ、邦題も“ファイナル・ソルジャー”とあたかもサザーランド主人公の戦争アクション映画かのような印象を生む形で売り出されました。このためネットでこの映画の日本での感想を検索すると、この点の不満を書いたものばかりが挙がってきます。このことは騙し半分でも敢えてサザーランドを前面に出した売り手側の商業的手腕を結果的に証明するものとも言えるわけですが、それにしてもこの邦題の野暮ったさは異様です。
主人公の娘をとりあうマオリ側の戦士はクリフ・カーティスが演じています。彼の名はまだあまり知られていませんが、最近そこらじゅうのハリウッド映画に脇役出演しまくっている俳優です。過去にこの記事シリーズで扱った“ファウンテン”ではスペインの南米探検隊に属する謎のイスラム剣士として登場するし、“ダイ・ハード4.0”ではFBIの指揮官としてブルース・ウィリスを牽制します(設定はたぶんアラブ系)。メキシコ人やイラク人、インド人の役も見たことあるかも。でも本人はマオリ出身であることをこの映画を通じて初めて知りました。
実は恒例の記事タイトルに「軍医」ではなく「斥候」の語を当てようかとも考えました。娘のみごもった子がのちに斥候がやるような撹乱行為でイギリス軍を惑わせるシーンがあるためです。けれどこの子役はあまり華がなく感心できず。娘の父である軍医の役にはステファン・リー。いぶし銀の名優だけに演技の水準はキャスト陣のなかでもピカ一です。
作品全編を通しての感想としては、原生林を舞台としたロケハンがとにかく美しく、マオリの集落や開拓団の居住区を再現したセットも非常に緻密で、それだけでも見た甲斐がありました。ただストーリーの展開はやや詩的に過ぎ、説明不足のまま流れてしまうことが徒と出ているようなシーンもそこかしこにあったのはもったいないところです。往々にして制作陣の思い入れが強すぎるとこうなります。ニュージーランド人である監督のヴィンセント・ウォードはプロデューサーとしてもハリウッドで確固たる地位にある人物のようで、だからこそ採算性はどの目にも低いこうした作品にこれだけのキャストを集められたのでしょうが、‘マオリを前面に出した作品を世界に売る’という気負いがやや出すぎた観は否めません。
さて‘大航海時代Online’にもすでにマオリの人々は登場しているわけですが、彼らがゲーム内で見せている言動は感覚的に少しおかしなものに映ります。詳しくは以前の記事(2007年8月26日記事「世界独航記ノ貮」↓末尾にURL)に述べたので割愛しますが、当然ながらそう簡単にヨーロッパ人の営みに馴染んでいったわけではありません。こうしたあたりで、大航海時代のヨーロッパの人々が原住民の住む遠方の土地でどのような形で植民活動を進め、現地の人々がどのように受容していったのかに関心のあるかたには、参考になるシーンが多くある作品にもなっていると思います。
アフリカであれアメリカであれどこであれ、白人たちは一方的な侵略行為によって既存のコミュニティを征服し破壊していっただけだろうと考えるのは簡単です。しかしそこには必ず自らの行為に疑問を抱いて行動に移した人々や、逆に植民活動を利用した原住民たちなどがおり、その展開は地域ごと・時代ごとに様々な変容を見せました。
こうした価値観の異なる集団と集団との接触の帰結として個人個人の内面に生じる葛藤までを読み込むと大航海時代の世界を考える楽しみはぐっと深みを増すはずです。これは一見情緒的な作業のようでいて、実質的にはロジカルな枠組みの問題というかテキスト依存の形態に落とし込みやすい圏域なので、‘大航海時代Online’もいずれはそうした領域にまで踏み込める水準を目指してほしいなとは思います。 うん。妙なまとめかたですね。
“River Queen” by Vincent Ward [+scr] / Samantha Morton, Kiefer Sutherland, Cliff Curtis, Temuera Morrison, Stephen Rea / 113min / New Zealand, UK / 2005 ※本作品の国内上映館での公開はなし。一般流通はDVDのみ。
※※過去記事「世界独航記ノ貮」: http://diarynote.jp/d/75061/20070826.html
Mamma Mia! 教授ブログ!! :
http://rainyheart.blog32.fc2.com/
スタイルは違うけれど思考回路はほぼ一緒なので、‘さよなら航路’に頻訪いただいているかたの幾らかにはこちらも気に入ってもらえると思います。あと私事の報告になりますが、普通免許とれました>w< 技能検定、あのシチュエーションはバカみたいに緊張しますね。(笑)
では本題。‘大航海時代Online’拡張版の新章が来週からスタートしますね。地理面での追加実装はオセアニア一帯がメインとなるようです。それにちなんで今回はニュージーランドの映画をとりあげます。
▼リバー・クイーン
この映画は1860年に起きたマオリ戦争の史実が舞台になっています。イギリス帝国主義の尖兵として密林に送り込まれた開拓団の隊士たちと、彼らを待ち受けるマオリ族の戦士たちのあいだで翻弄される娘が主人公。彼女も史実上の人物で、原題の‘River Queen’はマオリの側から彼女に当てられた呼称です。
19世紀半ばといえばイギリス本国ではすでに産業革命の真っ只中ですから大局的には大航海時代とは言い難いわけですが、そこは地球の裏側の出来事です。ジェームス・クックが初めてこの周辺の海図を作成したのが18世紀後半ですから、この地域では時代を遅らせて考えたほうが妥当というケースは様々な面で見られるのですね。登場する船について言えば、河をさかのぼる小舟やタグボートには素朴な蒸気機関も使用されて始めているものの、外洋向けの大型船舶はいまだ帆走が主体という時代。マオリの人々が乗る船としてはもちろん手漕ぎの木製カヌーが多数登場します。
本編は主人公の娘がマオリ族の青年の子供を身篭るところから始まります。彼女は開拓団に属する軍医の娘であり幼い頃から父より医術の教育を受けていたのですが、このマオリの子を宿したことと医術の素養を得たことの2点がその後の彼女の軌跡を稀有のものにしてゆきます。演じるのはサマンサ・モートン。明日から国内公開される“エリザベス:ゴールデン・エイジ”でもスコットランドのメアリー女王という極めて重要な役を演じています。エリザベス最大のライヴァルといって良い存在ですね。
そして彼女を想うイギリス側の兵士として登場するのがかのキーファー・サザーランド。ドラマ“24”のジャック張りのアクションシーンも確かにあるのですが、日本では軍服姿の彼がライフルを構える姿がDVDジャケットに大きく描かれ、邦題も“ファイナル・ソルジャー”とあたかもサザーランド主人公の戦争アクション映画かのような印象を生む形で売り出されました。このためネットでこの映画の日本での感想を検索すると、この点の不満を書いたものばかりが挙がってきます。このことは騙し半分でも敢えてサザーランドを前面に出した売り手側の商業的手腕を結果的に証明するものとも言えるわけですが、それにしてもこの邦題の野暮ったさは異様です。
主人公の娘をとりあうマオリ側の戦士はクリフ・カーティスが演じています。彼の名はまだあまり知られていませんが、最近そこらじゅうのハリウッド映画に脇役出演しまくっている俳優です。過去にこの記事シリーズで扱った“ファウンテン”ではスペインの南米探検隊に属する謎のイスラム剣士として登場するし、“ダイ・ハード4.0”ではFBIの指揮官としてブルース・ウィリスを牽制します(設定はたぶんアラブ系)。メキシコ人やイラク人、インド人の役も見たことあるかも。でも本人はマオリ出身であることをこの映画を通じて初めて知りました。
実は恒例の記事タイトルに「軍医」ではなく「斥候」の語を当てようかとも考えました。娘のみごもった子がのちに斥候がやるような撹乱行為でイギリス軍を惑わせるシーンがあるためです。けれどこの子役はあまり華がなく感心できず。娘の父である軍医の役にはステファン・リー。いぶし銀の名優だけに演技の水準はキャスト陣のなかでもピカ一です。
作品全編を通しての感想としては、原生林を舞台としたロケハンがとにかく美しく、マオリの集落や開拓団の居住区を再現したセットも非常に緻密で、それだけでも見た甲斐がありました。ただストーリーの展開はやや詩的に過ぎ、説明不足のまま流れてしまうことが徒と出ているようなシーンもそこかしこにあったのはもったいないところです。往々にして制作陣の思い入れが強すぎるとこうなります。ニュージーランド人である監督のヴィンセント・ウォードはプロデューサーとしてもハリウッドで確固たる地位にある人物のようで、だからこそ採算性はどの目にも低いこうした作品にこれだけのキャストを集められたのでしょうが、‘マオリを前面に出した作品を世界に売る’という気負いがやや出すぎた観は否めません。
さて‘大航海時代Online’にもすでにマオリの人々は登場しているわけですが、彼らがゲーム内で見せている言動は感覚的に少しおかしなものに映ります。詳しくは以前の記事(2007年8月26日記事「世界独航記ノ貮」↓末尾にURL)に述べたので割愛しますが、当然ながらそう簡単にヨーロッパ人の営みに馴染んでいったわけではありません。こうしたあたりで、大航海時代のヨーロッパの人々が原住民の住む遠方の土地でどのような形で植民活動を進め、現地の人々がどのように受容していったのかに関心のあるかたには、参考になるシーンが多くある作品にもなっていると思います。
アフリカであれアメリカであれどこであれ、白人たちは一方的な侵略行為によって既存のコミュニティを征服し破壊していっただけだろうと考えるのは簡単です。しかしそこには必ず自らの行為に疑問を抱いて行動に移した人々や、逆に植民活動を利用した原住民たちなどがおり、その展開は地域ごと・時代ごとに様々な変容を見せました。
こうした価値観の異なる集団と集団との接触の帰結として個人個人の内面に生じる葛藤までを読み込むと大航海時代の世界を考える楽しみはぐっと深みを増すはずです。これは一見情緒的な作業のようでいて、実質的にはロジカルな枠組みの問題というかテキスト依存の形態に落とし込みやすい圏域なので、‘大航海時代Online’もいずれはそうした領域にまで踏み込める水準を目指してほしいなとは思います。 うん。妙なまとめかたですね。
“River Queen” by Vincent Ward [+scr] / Samantha Morton, Kiefer Sutherland, Cliff Curtis, Temuera Morrison, Stephen Rea / 113min / New Zealand, UK / 2005 ※本作品の国内上映館での公開はなし。一般流通はDVDのみ。
※※過去記事「世界独航記ノ貮」: http://diarynote.jp/d/75061/20070826.html
コメント
今まで気づかなかったごめん>< さいきんお休み中だけど、やるならやり込まないと気が済まない性格のせいなだけで、いつ復帰してもおかしくない状態ですんw
あと今はなんかあれです、DOLに感じる一番の面白味がDOLにINせずに成り立っているという変な状況。へん〜