てのひらの温度
先日、ひさしぶりに‘大航海時代Online’へINして、
ジェノヴァへ行った。
そうしたら、あまりのひとの少なさに驚いた。

以前なら海事艦隊の募集がたくさんあって、
海事レベルを上げたいプレイヤー向けのバザーが
数えきれないほど並んでいた酒場前の通りにも、
たった一つのバザーすら出ていなかった。
けれどもそんなふうに変わってしまったその場所で、
海事クエストを紹介してもらえる仲介人の足元に1人だけ、
まだレベルの低いプレイヤーが勧誘募集のマークを出して座っていた。

そのひととわたしのほかは見渡すかぎり誰もいないその通りで、
わたしがそのひとのレベルだった頃にはひとが多すぎて
全員が表示されないくらいに混雑していたその仲介人の立つ場所で、
そのひとは勧誘希望の握手のマークを出してぽつんと座り続けていたのだ。
わたしはそれをみて、なんだかとても切ない気持ちに駆られてしまった。

もちろんわたしがジェノヴァでレベルを上げていた頃といまとでは
ゲーム内世界の状況もかなり違うから、
その場所にひとがいなくなったことは直接に
このゲームが廃れたことを意味するわけではない。
けれどわたしが感じたその切なさは、ひとが少なくなって寂しいとか、
そのひとが可哀そうとかそういうこととはやや違うらしいということに、
ジェノヴァの港を出航してしばらくたってから気がついた。

もしその通りに誰もいなかったなら、そのことに対して
わたしはせいぜい「このゲームもひとが減ったなあ」くらいの
適当な感想を抱くだけで走り去っただろうとおもう。
けれどそこにひとが一人座っていたことで、
自分が同じように勧誘マークを出してそこにいた頃の気持ちや情景が、
それとなしによみがえってしまっていたのだ。

それは初めてネットゲームに接した頃でもあったから、
ほんとうにいろんなことが新鮮だった。
自分より立派そうな初対面のプレイヤーたちの艦隊に入れてもらったときの緊張感や、
しばらく一緒に戦ったあとフレンド登録を交わす楽しさや、
仲良くなったプレイヤーと隣同士に座ってバザーを開いて、
つくった料理を売り競いながらあれこれ冗談を言い合った時間の流れや、
この場所で初めて体験したそうした記憶たちが、
いまは自分を含めて二人しかいないその通りに
まるで幻影のようにして立ち現われていく。
それがたぶん、そのとき湧き起こってきた切なさの源だった。


少し話は変わるけれどそれより前、数ヶ月ぶりに‘大航海時代Online’へ
INした瞬間、メールが届いてますよという表示がでた。
もう2年くらい前に休止していたフレンドの一人からのもので、
送信された日付は1ヶ月ほど前になっている。

メールには、復活していろいろと楽しみにしているからよろしくという内容が、
短いけれど丁寧な言葉で綴られていた。
あまり積極的に交流の輪を広げるタイプではないけれど、
築いたつながりは大切にしてゲームを楽しんでいる感じのひとだった。
休止前、何かのときに少し話したのを覚えているけれど、
たしか主婦のかたで空いた時間にちょこちょこプレイしているとも言っていた。
見るからに、ネットゲームは‘大航海時代Online’が初めてというタイプ。

それでさっそく返事を書いたのだけれど、あろうことか届かなかった。
フレンドリストから、彼女の名前が消えていたのだ。
こうであってほしくはないなという空想が、たちまちにして脳裡をかすめた。
それは彼女の心理をめぐる、こんな感じの想像だ。
2年ぶりに復帰してみたけれど、仲の良かったフレンドは
もうほとんどINしていない。
もうそのみんなとは遊べないんだと知ると、
途端にこのゲームが色あせて見えてきた。
とりあえず1ヶ月課金してみたけれど、最初の数日遊んだだけで、
なんだか楽しいと思えなくなっちゃった。
気持ちの整理もハッキリつけたいし、キャラ、消して終わろう。

もちろん、もっと違う理由があったのかもしれない。
そうだったらいいなとおもう。
けれどもしわたしの想像が図星だったとしても、ほんとうはそれは違うのだ。
彼女が復活していた1ヶ月のあいだ、わたしは課金していなかった。
わたしが課金した頃には、彼女はもういなくなっていた。
また一緒に遊べるのが楽しみ、というメールだけを残して。
そんな感じのすれ違いはきっと、本人たちも気づかないまま
いまこの瞬間にもたくさん起き続けているんじゃないか。


ジェノヴァの広い通りの話に戻すと、
勧誘募集の握手マークを出してぽつんと座っていたそのひとには、
これからそのひとなりの体験がきっとたくさん待ち受けているはずだ。
それはわたしの体験のように
たくさんの艦隊募集に恵まれたものにはならないかもしれないけれど、
もうしばらく座って待ったあと、
もし偶然に同じ目的のプレイヤーが通りがかって
そのひとの勧誘募集に応じたなら、きっとその一つの出会いが
その二人にとってはとても大切なものに育っていくはずだとおもう。

だから一層おもうのだ。
たとえば課金を中断したプレイヤー同士でも
簡単に連絡をとり合えるような、
ちょっとした遊びくらいなら一緒にできてしまうような工夫を、
運営はもっと大胆に取り込んでもいいんじゃないかと。
いまは個々のプレイヤーが自前のブログやメッセンジャーなんかを
使った自助努力でそれを補っている状態だけれど、
それではどうしてもつながりが小規模になってしまう。

いまの‘大航海時代Online’の拡張の方向性は、
遠くに行かなければ手に入らない船の素材や、
スキルが高くないと作れない家具の追加のようにして、
総体的にいま課金しているプレイヤーをより遠くに向かわせ、
より長い時間ゲームへ縛るほうに向いている。
あるいは追加の料金を払えさえすれば、
こんなに便利なことができますよとか、
こんなに楽しい要素が増えますよ、みたいな方向性。
けれどもそれで、‘大航海時代Online’のゲーム内世界が
ほんとうに豊かになるとはあまり思えない。
個々のプレイヤーにとって、より長続きするゲームになるとも思えない。

ネットゲームは、そこで育まれたゲーム内の人格と人格とが交わる
新たなコミュニティーの形を生み出した。
それを用意したゲーム制作会社に何から何までを望むのは無理な話だけれど、
少なくない時間をかけて築かれたプレイヤー同士の心のつながりは、
プレイヤー個々人にとっては実社会のそれに違わず文字通りの財産になっていく。
少なくとも、そうなる可能性が開けている。
それを大切な要素と考えるゲーム制作会社が、
特にRPG系のネットゲームの世界では生き残っていくんじゃないか。

できれば‘大航海時代Online’には、
そういうところを大切にしたゲームであってほしいとおもう。
ひとりのプレイヤーの勝手な期待に過ぎないけれど。

 

コメント

suiken
2008年9月24日20:33

勝手な期待に過ぎないけれど。まで読んだ

goodbye
2008年9月24日21:10

@w@;

nophoto
通りすがり
2008年9月25日9:40

“モバイルフレンドメール”機能は、体験版もしくは製品版のゲームアカウントをお持ちの方なら、「@モバイル」の購入・適用状況やゲームアカウントの有効期限を問わず、どなたでも無料でご利用いただけます。なので、課金されてない方にもメールは届きますよ

稲川淳子
稲川淳子
2008年9月25日9:44

公園に捨てられた子猫みたいなもんだろ
DOLは純粋にゲームを楽しむというよりお友達に会いに行くための
社交場みたいなもんだからな。これから広がる冒険も期待薄いと思うよ。
永久無料垢増えまくってるようだがやはり本キャラを永久無料にしてほしいよね。
大海戦等の大イベント参加不可やPKくらい禁止で。

goodbye
2008年9月25日13:52

>通りすがりさん:
 ええと、それは知ってますけど、どういったらいいんでしょうね。たとえばジェノヴァの酒場前の通りだって、今でもひとが多い時間帯にはそれなりに賑わっているようですが、それはこの記事のポイントではないんですよね。課金が切れているひとにもメールが届く。そのことで回収しきれてないものがあるからこそ、ゲームの外でもキャラ名義で個別に色々やるひとが多いんじゃないでしょうか。

 Mixiやらメッセンジャーやら、ゲームの外部サイトにキャラ専用のアカウントを作ってるひと、けっこういますよね。そのほとんどのひとが、MixiやMSNがやりたくてというより、単に便利なコミュニケーションツールとして採用していると思います。そっちのほうにこの記事で言わんとしてることの重点はむしろあるかな。
 敢えてに外部に連絡回路をつくる必要を特に感じさせないくらいの仕掛けがあれば、休止プレイヤーの再課金率もトータルで上がりそうな、みたいな。なのでもし運営サイドでこれを読むひとがいたら通りすがりさんと同じ意見を持っただけで気が済むひともいそうだけど、それって立場的に目線の方向が真逆かもしれませんね、みたいな。
  

goodbye
2008年9月25日13:54

>バーチャルネット海賊きゅんきゅん☆14歳さん:
 ああなるほど。月額課金って、一度払えば何しても同額っていうスタイルがスッキリして分かりやすかったけど、いまやそのスッキリ感もなくなりかけてますよね。そうなると弊害的な要素のほうが上回っちゃう日も近いのかな。というかいろいろオプションが増えた反動で、そう感じているひとが増えていく傾向にあるのはきっと確かですよね。

 まあ個人的にはなにもネガティヴになったり嘆いたりするのがテーマじゃなくて、ゲームをやってみて感じたところを言葉にしてみる、という‘遊び’をしている点で従来となにも変わってないんですけどね。気分的には。
 

nophoto
通りすがり
2008年9月25日14:20

ありゃ、それは申し訳ない。

いや、あの・・・今回のすれ違いってメールサービス使ってれば防げたかなと。そして相手の方はサービスの存在を知っていて返信がこなかったから・・・なんて嫌な想像してしまいまして。

goodbye
2008年9月25日19:05

ご心配を抱かせてしまったのですね。書き方が悪かったかもしれません。わたしはデスクトップPC以外をこのゲームに巻き込むのは真っ平なタチなので、相手がモバイルサービスを使っていることを当然視はもちろんしないのですが、もしかしたらそういうこともあるかもですね。

あとこの‘海のなかの見えない航路’の記事シリーズでは、自分個人の体験を一般化した水準にまで引き揚げて捉えることに重心を置くのでこういう書き方になりましたが、このフレとのつながりが消えたことのみを単体で言うなら、実はそれほど残念に思ってはいないんです。なぜならわたし自身が今後もこのゲームを継続するかどうかはまったく不明だからです。こうして「自分の意見」と「自分の心情」とを無駄に峻別して考える習性は、リアルでも他人によく誤解されるんですけどねw

うぃしぃぇ
うぃしぃぇ
2008年9月26日20:49

ぱっとしないgamecityをモバゲみたいにしたら良いと思った、信長オンライン飽きたらそこでの財産なり経験値をDOLになにかしらいこうできたり、DOL飽きたら三国志へコミュニティ毎移住したりね、そういう仕組みできたらKOEIゲーに囲いこむことができるんじゃぁないだろーか

しかしワタクシはパーソナルコンピューティング上級者のつもりなんですけどね、昔のネトゲ住人と今の住人のネットリテラシーもそうだけど昔は純粋なゲーマーな印象が多かった、けど最近はゲーマー属性持ったSNS的コミュニケートゲーマー(造語)のようなー、箸休め的にnet逃避的言語感覚用いるならば「なんだ、主婦か。」みたいな。
 ゲームプログラムといっても人が作ったものだし(物語)まぁどちらかに当てはまるような人でも繋がりを求めていますね、病んでますね、病人多くて困る。

そんなこんなで、ポエミィコメント失礼ごめんあそばせぇ~

goodbye
2008年9月27日14:12

あーgamecityのサイトの見た目のつまらなさってある意味すごいよね。エンターテインメント要素というか、ワクワク感がまったくない。KOEIのゲームって横断的にやる層けっこう厚いだろうし、あそこを核になんか出てきてくれたら面白そうね。

他のネトゲは全然だけどDOLはやってるとか、冒険や戦闘を極めたいんじゃなくて何となくみんなとわいわいしてたいとか、従来型のゲームマニアというよりライトユーザーみたいな、テレビとか電話みたいな家電の延長線上にパソコンがあるような層の心もDOLは結果的に掴んだわけだから、そこはもっと戦略的に重視されてもいい気がするなぁ。DOLの繋がりを起点に他ゲーム行ってるひとたちも多いわけだしね。関係性こそ病の起源ですわね。ポエミィコメントまたよろしくです~w

マサムネ
2008年9月29日15:44

スイケンたんが何処まで読んだんだ?と思ったら最後まで

「ちゃんと」読んでいたみたい。 文字が読めて安心した。

さて。本題に。

私も正式サービスから遊んでますけど、人が減ったり様相が

がらっとかわって寂しさを感じる事が多々としてあります。

フレの数は47人から増えないですけどね。

アジア実装の後日本を実装して日本に亡命!!などのことが

できれば人の流れはかわったかもしれません。

私はジェノバスクールにいった事がないのであれですけど、壺で

初めて艦隊戦って楽だなあ。と感じました。修理や統率を分けあ

って戦っているな。という感じがあったからです。壺400日

とかありえないですよね。今じゃ気合が続きません。

三国無双みたいに大勢が決したら次のシナリオでリスタート。

という方向にもっていけば下方修正山盛りゲームにはならなか

ったかもしれませんね。

キャラデリすると名前が消えるんですね。

消えてしまった名前ってあまりみないですね。

そういうのって結構ショックですよね。

でも、縁があればどこか出会えます。きっと。

goodbye
2008年10月1日15:03

少し既述コメントに被りますが、寂しさそのものはあまり問題に感じてないんです。またどこかで会えることを期待してるわけでもなくて、そこらへんは出会いの条理みたいなもので‘そういうもの’だと思ってます。

なのでどちらかといえば、「システム的な拡張充実がなければ尻すぼみになっちゃうなー」というネットゲームの宿命はこうした側面でも言えることなんですね、というのが本文で言いたいことの中核にあったんだと思います。きっと。

ファンネル2
2008年10月1日21:11

ウフフ、Goodさんにであちゃった。
ネトゲってネトゲいがいのこーゆーところでも
であえるんですね。
リンクありがとーあったらよろしくなのです。

goodbye
2008年10月2日7:13

はい、よろしく~^^
ブログ一目見てお気に入りになりましたw

お気に入り日記の更新

最新のコメント

日記内を検索