▼いきなり本題
『帆走軍艦の時代』
http://jimaku.in/w/tLh8Rf9DX2I/UDHrDP_B_Yb
↑まずはご覧下さいませ。できれば音量も大きめで。
おまけのつもりで作り出したら、妙に力が入ってしまったので「本題」扱いに。(笑) 映画“マスター・アンド・コマンダー”[2006年7月8日記事]のヴィデオクリップを素材にしています。この字幕動画に関連させる感じで、当初予定していた記事構成を逆走していきます。
▼‘大航海時代online’拡張パック第2弾
3週間後に最初の実装を控え、公式HP内では現在その内容公開が第2回までなされてますね。このなかで個人的に目を引かれたのは、新出である装甲戦列艦の外観として加わる、船尾円形回廊のグラフィックでした。(下記URL・4つ目の画像)
http://www.gamecity.ne.jp/dol/cruzdelsur/circumnavi2.htm
このグラフィックからは円形なのは回廊のみで、船尾楼本体は従来の戦列艦の使い回しであることが窺えます。けれども実際的に考えてみると回廊のみを円形とする意義もあまり感じられないので、これはおそらく戦列艦における船尾の形状が角型から円形にシフトした史実上の技術革新を背景におく実装だろうと推測できます。
▼円形船尾と技術革新
四角状の船尾に比べ、円形状の船尾が敵船からの縦射に対しより強い耐久性をもつであろうことは、後代の人間からみればそれほど想像に難くはありません。しかし欧州の列強諸国がこの点に気づき、円形船尾を国全体の規格として導入したのは意外に遅く19世紀に入ってからのことでした。ほぼ同時期に同種の試みが複数の場所で行われたようですが、たとえば英国海軍が船首の形状において円形構造の強さを実証し船尾へも導入したのが1810年代、フランスが円形船尾を採用したのは実に1830年代。蒸気機関による戦列艦の登場が1852年ですから、帆走軍艦として最後の系譜を彩ったのがこの円形状にそびえる船尾の姿だったことになります。
‘大航海時代online’において蒸気船の発明はいくらなんでもないでしょうから、設定上は究極の船体がとうとう登場するのだとも言えます。そう考えてみると、これはなかなかに感慨深いアップデートではないでしょうか。今回の拡張パックの目玉である世界一周航路の確立は16世紀初期、戦列艦におけるこの技術革新は19世紀初期ですから実年代に重ね合わせるとずいぶんと幅のあるアップデートということになりますが、そのことでゲームの魅力が損なわれるようにも見えないあたりに、運営サイドの苦心のあとが感じられますね。部分部分で文句を言うのは簡単ですが、このバランス感覚はやはりプロのものだと思います。
▼祝!新3国実装2周年
それはそうと‘大航海時代online’の世界にヴェネツィア・フランス・ネーデルランドが加わって、今日で丸2年となりました。新3国・旧3国という切り分けも当初に比べだいぶ意味が薄らいできました。世界周航ルートの開通を控え、ゲーム内の雰囲気もまたゆっくりと変わりつつありますね。
わたしが初めてこのゲームに課金したのも2年前の今日でしたから、この日は個人的にも思い出深いものがあります。それにこれほど長い付き合いになるとは思いませんでした。(笑) 正直に言って大量の時間をゲームに費やしたことにかなりの後悔や焦りを覚えた時期もありましたが、直接このゲームを通じて、というよりも‘大航海時代online’が傍らにある日々を通して初めて得られたこともまた、思いのほか多くあったようにも感じます。
たとえば帆船に関する知識など2年前は三角帆と四角帆の違いもわからなかったくらいなのですが、冒頭の字幕動画の作りかけをきのう商会メンバーに見てもらったところ、みごと海事オタクっぽいとの評価をいただきました。(笑) もちろん帆船史の知識などそれだけでは酒の席以外で役に立つことなどきっとないでしょう。けれどそういうことでもないんですよね。
▼艦隊戦術と国家戦略
せっかくなのでこの字幕動画『帆走軍艦の時代』の作成中に考え至ったことを例に挙げると、動画内には英国海軍とフランス海軍がそれぞれに得意とした艦隊戦術に関するプロットがあります。この両国の戦い方の違いというのは単に得手不得手の問題ではなく、その局地的な戦術的思考のズレの根底に、より大局的な国家戦略の差異がありました。
海外において積極的な拡大政策を進めつつ国内の工業化を図る英国側にとっては、右肩上がりの隆盛をやめないネーデルランドを牽制する意味でも、とりわけドーバー海峡域での戦列艦隊の集中運用が重要な意味をもったのですね。それに対しあくまで領地内での農業に基盤を置くフランス側はいきおい陸軍への傾注の度合を増し、戦力を集中してくる英国艦隊などはできる限り相手にせず、ゲリラ的に敵性商船を襲うことで通商路に打撃を与える私掠活動へ自国海軍を投じる政策を採りました。こちらは時に敵対状況に置かれたスペイン王家のカリブ領地への打撃をも視野に入れたものでしたが、ともあれこのためにその場その場で相手を押し切れるだけの戦力をもつケースが多かった英国艦隊は拿捕行動も容易な風上側を、ヒット&アウェイを本領としていたこの時期のフランス艦隊は退避に優る風下側を選ぶ必然性が生じたわけです。
そのようにしてある局地海戦において個別の軍船が遭遇した敵船に対して採る風上に回るか風下に出るかといった判断が、場合によっては世界規模での経済流通状況をも反映させうるということを知ったのは新鮮な体験でした。こうしたことは学校の世界史ではちょっと教わったことがありません。けれども本来はこうした諸事象相互の有機的な連関の様に触れることが、歴史を学ぶ意義でありまた醍醐味でもあるはずなんですよね。
少し大げさかもしれませんが、そうした思いを込めて作りだしたら今回はオマケが本題になったわけです。(笑) むやみに力が入ったのは自身のプレイ開始2周年ということもあってかも。ご感想ご意見などお気軽にコメントいただければ嬉しいです。
あとリアル近況少し。自動車の仮免許、とりました。(笑) むだに達成感あったので書いてしまいます。でもマニュアル運転がこんなに繊細だったとは! いつもついアウトからインコースぎりぎりを回ってしまい、注意され続けてます。教官によっては無言でにらまれるようになったり。これはこれでスリル満点な日々かもです>w<
※字幕動画『帆走軍艦の時代』作成上のおもな参考文献: 1. 小林幸雄著 『イングランド海軍の歴史』 原書房,2007 2. Romola & R.C.Anderson著・杉浦昭典監修・松田常美訳 『帆船 6000年のあゆみ』 成山堂書房,2004 なお動画をよく見るとわかりますが、双方の船は必ずしも明確な風上/風下の位置関係を占めていません。そもそもが単艦同士による遭遇戦ですし、そこはあくまで素材に使用したまでと割り引いてご覧いただければ幸。
『帆走軍艦の時代』
http://jimaku.in/w/tLh8Rf9DX2I/UDHrDP_B_Yb
↑まずはご覧下さいませ。できれば音量も大きめで。
おまけのつもりで作り出したら、妙に力が入ってしまったので「本題」扱いに。(笑) 映画“マスター・アンド・コマンダー”[2006年7月8日記事]のヴィデオクリップを素材にしています。この字幕動画に関連させる感じで、当初予定していた記事構成を逆走していきます。
▼‘大航海時代online’拡張パック第2弾
3週間後に最初の実装を控え、公式HP内では現在その内容公開が第2回までなされてますね。このなかで個人的に目を引かれたのは、新出である装甲戦列艦の外観として加わる、船尾円形回廊のグラフィックでした。(下記URL・4つ目の画像)
http://www.gamecity.ne.jp/dol/cruzdelsur/circumnavi2.htm
このグラフィックからは円形なのは回廊のみで、船尾楼本体は従来の戦列艦の使い回しであることが窺えます。けれども実際的に考えてみると回廊のみを円形とする意義もあまり感じられないので、これはおそらく戦列艦における船尾の形状が角型から円形にシフトした史実上の技術革新を背景におく実装だろうと推測できます。
▼円形船尾と技術革新
四角状の船尾に比べ、円形状の船尾が敵船からの縦射に対しより強い耐久性をもつであろうことは、後代の人間からみればそれほど想像に難くはありません。しかし欧州の列強諸国がこの点に気づき、円形船尾を国全体の規格として導入したのは意外に遅く19世紀に入ってからのことでした。ほぼ同時期に同種の試みが複数の場所で行われたようですが、たとえば英国海軍が船首の形状において円形構造の強さを実証し船尾へも導入したのが1810年代、フランスが円形船尾を採用したのは実に1830年代。蒸気機関による戦列艦の登場が1852年ですから、帆走軍艦として最後の系譜を彩ったのがこの円形状にそびえる船尾の姿だったことになります。
‘大航海時代online’において蒸気船の発明はいくらなんでもないでしょうから、設定上は究極の船体がとうとう登場するのだとも言えます。そう考えてみると、これはなかなかに感慨深いアップデートではないでしょうか。今回の拡張パックの目玉である世界一周航路の確立は16世紀初期、戦列艦におけるこの技術革新は19世紀初期ですから実年代に重ね合わせるとずいぶんと幅のあるアップデートということになりますが、そのことでゲームの魅力が損なわれるようにも見えないあたりに、運営サイドの苦心のあとが感じられますね。部分部分で文句を言うのは簡単ですが、このバランス感覚はやはりプロのものだと思います。
▼祝!新3国実装2周年
それはそうと‘大航海時代online’の世界にヴェネツィア・フランス・ネーデルランドが加わって、今日で丸2年となりました。新3国・旧3国という切り分けも当初に比べだいぶ意味が薄らいできました。世界周航ルートの開通を控え、ゲーム内の雰囲気もまたゆっくりと変わりつつありますね。
わたしが初めてこのゲームに課金したのも2年前の今日でしたから、この日は個人的にも思い出深いものがあります。それにこれほど長い付き合いになるとは思いませんでした。(笑) 正直に言って大量の時間をゲームに費やしたことにかなりの後悔や焦りを覚えた時期もありましたが、直接このゲームを通じて、というよりも‘大航海時代online’が傍らにある日々を通して初めて得られたこともまた、思いのほか多くあったようにも感じます。
たとえば帆船に関する知識など2年前は三角帆と四角帆の違いもわからなかったくらいなのですが、冒頭の字幕動画の作りかけをきのう商会メンバーに見てもらったところ、みごと海事オタクっぽいとの評価をいただきました。(笑) もちろん帆船史の知識などそれだけでは酒の席以外で役に立つことなどきっとないでしょう。けれどそういうことでもないんですよね。
▼艦隊戦術と国家戦略
せっかくなのでこの字幕動画『帆走軍艦の時代』の作成中に考え至ったことを例に挙げると、動画内には英国海軍とフランス海軍がそれぞれに得意とした艦隊戦術に関するプロットがあります。この両国の戦い方の違いというのは単に得手不得手の問題ではなく、その局地的な戦術的思考のズレの根底に、より大局的な国家戦略の差異がありました。
海外において積極的な拡大政策を進めつつ国内の工業化を図る英国側にとっては、右肩上がりの隆盛をやめないネーデルランドを牽制する意味でも、とりわけドーバー海峡域での戦列艦隊の集中運用が重要な意味をもったのですね。それに対しあくまで領地内での農業に基盤を置くフランス側はいきおい陸軍への傾注の度合を増し、戦力を集中してくる英国艦隊などはできる限り相手にせず、ゲリラ的に敵性商船を襲うことで通商路に打撃を与える私掠活動へ自国海軍を投じる政策を採りました。こちらは時に敵対状況に置かれたスペイン王家のカリブ領地への打撃をも視野に入れたものでしたが、ともあれこのためにその場その場で相手を押し切れるだけの戦力をもつケースが多かった英国艦隊は拿捕行動も容易な風上側を、ヒット&アウェイを本領としていたこの時期のフランス艦隊は退避に優る風下側を選ぶ必然性が生じたわけです。
そのようにしてある局地海戦において個別の軍船が遭遇した敵船に対して採る風上に回るか風下に出るかといった判断が、場合によっては世界規模での経済流通状況をも反映させうるということを知ったのは新鮮な体験でした。こうしたことは学校の世界史ではちょっと教わったことがありません。けれども本来はこうした諸事象相互の有機的な連関の様に触れることが、歴史を学ぶ意義でありまた醍醐味でもあるはずなんですよね。
少し大げさかもしれませんが、そうした思いを込めて作りだしたら今回はオマケが本題になったわけです。(笑) むやみに力が入ったのは自身のプレイ開始2周年ということもあってかも。ご感想ご意見などお気軽にコメントいただければ嬉しいです。
あとリアル近況少し。自動車の仮免許、とりました。(笑) むだに達成感あったので書いてしまいます。でもマニュアル運転がこんなに繊細だったとは! いつもついアウトからインコースぎりぎりを回ってしまい、注意され続けてます。教官によっては無言でにらまれるようになったり。これはこれでスリル満点な日々かもです>w<
※字幕動画『帆走軍艦の時代』作成上のおもな参考文献: 1. 小林幸雄著 『イングランド海軍の歴史』 原書房,2007 2. Romola & R.C.Anderson著・杉浦昭典監修・松田常美訳 『帆船 6000年のあゆみ』 成山堂書房,2004 なお動画をよく見るとわかりますが、双方の船は必ずしも明確な風上/風下の位置関係を占めていません。そもそもが単艦同士による遭遇戦ですし、そこはあくまで素材に使用したまでと割り引いてご覧いただければ幸。